私たちの国フィリピンには、色々な種類のお店があります。そして、私たちの住んでいるスラムにもまた、色々なお店があるんです。理髪店(床屋)やサリサリストア(コンビニ)、花屋さん、定食屋さん・・・、自分でやっている店もあれば、他にオーナーがいて、店主は雇われているだけの店もあります。ビジネススタイルも店によって違うので、そこでつけられている値段もさまざまです。ではこれから、そんなスラムのお店事情をシリーズで紹介したいと思います。

<スラムのお店、その1>床屋さん

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床屋さんって、どんなとこか知ってますよね? ヘアカット1回いくらぐらいだと思います? 今回はスラムにある床屋さんについて、あなたにも教えちゃいましょう。

私のお気に入りの床屋は、私の家から歩いてすぐのところにあります。スラムには、三つの床屋さんがあり、それぞれ別の店主が経営しています。ひとつ目はだいぶ年をとった店主さん。ふたつ目は10代の若者がやっています。そして残るひとつが中年のおじさんがやっています。私たちのお気に入りは中年のおじさんがやってる床屋。といっても、主人か弟が髪を切るときだけしか床屋に一緒に行かないんですけどね。

私たちは店長さんのことを「クヤ・バート」と呼んでいます。お年はだいたい30歳ぐらいなんですが、ヒゲをはやしていて、髪型がステキなので、とてもそんな年には見えないんですよ。身長は150センチくらいかな? ふとってもいないし、やせてもいないって感じです。彼は身体に障害があるんですが、家族を養うために、ここでずっと働き続けています。

彼の店には髪を切られる人が座る椅子がひとつあり、あとは順番待ちをするお客さんが座る長いすがひとつ置いてあります。そして、待っているお客さんが飽きないようにと、なんとテレビまで置いてあるんです。

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店長さんは、道ばたや学校など、どこでも私に会うといつも笑顔で「ハーイ!」って挨拶してくれます。彼は私と同じく、とてもおしゃべりなんですよね。だから、私が弟の散髪で店に行ったときなんか、散髪なんてそっちのけで二人であれこれ色々おしゃべりしちゃいます。彼はもう15年も理容師さんをしているんですよ。

店のオーナーは別にいて、彼は雇われ店長さんです。彼の給料は、何人のお客さんの髪を切ったかで決まります。いくらもらえるかは知らないんですが、一人のヘアカット代が40ペソ(約90円)ですから、それよりはだいぶ少ないですよね。だから、彼の給料は家族の生活費には十分とは言えません。だって彼には三人子どもがいるんですから。

だから、スラムにいる人はとても厳しい生活をしていて、たくさん働かないといけません。でも、私たちは経済的には豊かではないですが、家族への愛はたっぷりなんですよ。家族が一緒にいて幸せなら、重労働するだけの価値はあるんですからね~。